2013年09月18日

優等生

<小中学校では優等生>

「最近は塾通いでやめちゃう子が多いんですよ。今年も三遊間の要だった三塁手が塾に行くためにウチをやめた。少年野球というのも、なかなか難しいものです」

 こうボヤくのは、元石川サンダーボルトの佐々昇代表だ。

 松井は小学生時代、野球と塾を両立。元石川サンダーボルトのエースとして活躍しながら、山内小学校ではほとんどの科目で90点以上。山内中学校でも好成績をキープしていた。

 松井が進学した桐光学園は神奈川県内でも有数の進学校。早慶上智に進学する者が多く、数こそ少ないが東大や京大に合格する者もいる。入学する際の受験では特進クラスのSAコースと、それ以外のAコースに分かれており、Aでも偏差値66(14年度)だ。他の野球強豪校の例に漏れず、高校から入学した生徒向けに「スポーツ特進クラス」が1クラスあり、松井はここにいる。体育会系の生徒の中でも選抜された者しか入れない「スポーツ特進クラス」だが、野球部OBの多くは、「他の強豪校の選手と話すと、ウチは授業も試験もレベルが高かった」と話す。

 野球だけやっていればいい、という環境ではない。松井は1年の1学期末の試験で赤点を取ってしまい、桐光野球部の伝統となっている「罰」を食らうことになる。

<グラウンドの横で勉強>

 1年先輩で東農大1年の宇川一光はこう話す。
「赤点を取った選手は、グラウンドと向き合いながら勉強をしなきゃいけないんですよ。僕も1年の時に1度だけあった。あれはイヤでしたね」

 宇川と同級生で国士舘大1年の田中拓夢もこう言う。
「グラウンドのベンチ裏に通路があって、そこに長机が置かれる。赤点を取ると課題が出るので、それをすべて終わらせないと練習に参加させてもらえない。練習の時はもちろん、試合の時でもやらされますからね」

 遠目にはスコアをつけているようにも見えるが、机に広げているのは教科書とノート。
「僕も1年の時に1度。試合で来た対戦相手の選手たちにも、『こいつら、何やってんだ?』って引かれるんですよ。あれは恥ずかしかった」
 とは田中だ。

 高校は中学よりも授業が多い。その上で練習もこなさなければならない。桐光の野球部に入った1年生の多くは、1学期の期末試験で赤点を取り、この“洗礼”を浴びることになる。松井も例外ではなかった。

 今でこそ先輩後輩の垣根が低い桐光だが、その慣習が出来たのは松井が1年生の秋から。当時はまだ野球強豪校に劣らず規律は厳しく、松井もタメ口で話すどころか、慣れない環境に肩身を狭くしていた。そんな中で先輩の練習を見ながら勉強しなければいけないのだから、よほどこたえたのだろう。





Posted by ran at 16:58